変身

監督:ワレーリイ・フォーキン
脚本:イワーン・ボボーフ、ワレーリイ・フォーキン
キャスト:エヴゲーニイ・ミローノフ、イーゴリ・クワシャほか
原作:フランツ・カフカ

「ある朝、グレゴール・ザムザがなにか気掛かりな夢から眼をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な毒虫に変わっているのを発見した。」
という出だしで有名な、カフカ原作の「変身」が映画化されたというので楽しみにしていた。
毒虫はどう表現されるのか。クローネンバーグ監督の「裸のランチ」風?リアルな巨大ゴキブリ?という「毒虫」の見かけにも興味があったが、
一番興味があったのは「滑稽さが感じられるか」だった。
カフカの作品では、主人公は突然これまで慣れ親しんだものとは違う「常識」の中に投げ込まれたり、一生懸命何かをしようとするにもかかわらず、見当違いな行動にしかならない、という描写が多く出てくる。
本人にとっては必死でも、周りから見れば滑稽でしかない。この「悲惨だけど滑稽」なところが、私がカフカを好きな点なので、映画ではどう表されているかに興味があったのだ。
 しかし、この映画は重かった。映画は原作とほぼ同様に進む。「毒虫」は特に何かをメイキャップするでもなく、主人公が地面を這う、手肢をカサカサと動かす、といった体の動きで表される。理不尽に虫に
なってしまった主人公が、映像では人間の姿のまま、家族から受ける仕打ち(家族も苦しんでいるが)。ラストシーンのピクニックに出かける場面の描写も、いっそう重さに拍車をかけているように思えた。