コーマック・マッカーシー/血と暴力の国
- 作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2007/08/28
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 182回
- この商品を含むブログ (123件) を見る
通り魔が恨み・物取りを目的とした殺人に比べ怖ろしいのは、「理解できない殺意」だからだろう。シュガーの殺意がそれで、作者が"pure evil"と言っているように、殺される側にとっては運が悪い、運命だったとしか言いようがない。モスはそれと戦った。彼が最後まで逃げられると思っていたのか、それともどこかであきらめの気持ちを持ちながら逃げ続けていたのか、ははっきりとは描かれないが、人間の心の強靭さはこういった局面で試されるのだろう。これは主人公モスの妻と「運命」の関わりとの対比で一層明らかになっているように思う。
訳文の文体には読点が少なく、地の文と会話の区別がないこととあわせて畳み掛けるような口調だ。原文がどうなのか気になる文体だが、これはどのような効果を狙っているのだろうか。他の作品も読んでみたい。